とりあえず読んでみる
本の感想を思いつくままに書いています。読んだ順番ではありません。   あと非常に偏った趣味なのでその辺もご理解いただけると嬉しいです。    ※画像の大きさがおおざっぱなお勧め度です。

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悪の教典 貴志祐介

この人は一つの作品に一体どれだけの労力をつぎ込んでいるのだろう。
新世界より」でも結構な分量を高い完成度で仕上げたことに相当な労力をつぎ込んでいることがうかがえたが、この作品も単なる一教師が大量殺戮をやる話にふさわしくないほど丁寧に描かれている。
クラスを丸ごと殺すというのはなんとなく高見広春「バトルロワイヤル」を思い出す人もいるかもしれない。しかしそれはどちらの作品も表面でしかとらえていない読み方ではないか。
確かに両作品とも同じ批判はあると思う。若者を大量に殺戮するという残酷さが共通しているからである。
だが、そもそも世界設定から痛烈な社会批判をかけたバトルロワイヤルに対し、この作品は社会批判ではなく、人の感情に焦点を当てている。
もっと言えば、バトルロワイヤルにおける殺人はあくまでも高見広春の主張を衝撃性を持って伝えるための演出であるのに対し、この作品における殺人は一度やってしまうと歯止めがかからなくなる人間心理を描き出したものといえる。
そして、人間心理を描き出すために、蓮実という人間を非常に丁寧に描くことに前半をつかい、殺戮には割合としてはそれほど多くのページを割いていない。
だが、そういう構成にしたからこそ、後半の物語を一気に読ませられてしまう。
どうやって犯罪を成し遂げるかという犯人のわかっている推理小説的な読み方もできるため、蓮実の視点になってどうやって殺していくのかというのが気になりつつ、それでいて生徒を殺さないでと願いながら読んでしまった。
そして読み終えた後に、この作品が相当にいろいろな伏線と、一般人がもつであろうかなりの数の疑問への理由づけを織り込みながら構成されていることに驚かされる。
それだけの構成をしておきつつも、決して調べたことをひけらかさない。だからこそ長いのに無駄がなく、一気に読めるのである。
かなりの殺人が起きるので、生理的に受け付けない人も多いかもしれない。
しかし、2010年を代表する作品の一つであることは間違いないだろう。
悪の教典 上悪の教典 上
(2010/07/29)
貴志 祐介

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悪の教典 下悪の教典 下
(2010/07/29)
貴志 祐介

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おまえが若者を語るな! 後藤和智

このブログで小説でもエッセイでもない本を取り上げるのは久々ですね。
これはいわゆる若者とはこうである、という有名人たちの意見に、
「その根拠を示せ」と主張した本です。
非常に単純明快で、わかりやすい主張です。
そしてこの単純明快な主張に対して、多くの論者が答えられていないという現実があります。
宮台や香山リカ、藤原正彦らマスコミでもてはやされている人たちの掲げる若者論がいかにいい加減で個人の印象に基づくものであるか、もっと言ってしまえば、妄想にすぎないものであるかということを具体例をあげながら丁寧に指摘しており、もっともらしい言葉にいかに多くの大人が騙されているかということに気づかされます。
筆者は84年生まれということで、なるほどいまどきの若者の置かれている過酷な状況をよく理解しており、そしていわゆる「大人」の勝手なイメージの間違いを的確に指摘できるわけだなと感じました。
人によってはいろいろと耳が痛い話もあるのではないでしょうか?
諏訪哲司あたりに読ませたい本ですね。
おまえが若者を語るな! (角川oneテーマ21 C 154)おまえが若者を語るな! (角川oneテーマ21 C 154)
(2008/09/10)
後藤 和智

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真綿荘の住人たち 島本理生

まあこんなもんじゃないの?
という感じ。
真綿荘という下宿に住んでいる人たちを一人ずつ主人公にした話を描いた本。
ところどころに島本理生らしさがあるので、ファンにはいいかもしれない。
個人的には最初の大和君をそのまま主人公で全部押し切ったら面白かったのにと思わないでもない。
全体的にそれほど目立った欠点はない。
ただ、これは、と思うような長所もなかったところが残念である。
真綿荘の住人たち真綿荘の住人たち
(2010/02)
島本 理生

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まほろ駅前番外地 三浦しをん

くだらないことはわかっていたはずなのに…
俗に言う「やおい」本なのだろう。
それがわかっていて読んでしまった私が悪い。前作をあれだけ酷評しておきながら、読んだのがバカでした。
続編が本編から急速に改善されるなどということがそうあるわけもなく、そもそも本編の基本的な部分がいろいろと問題ありだったのに、その基本が変わっているわけがないのです。
したがって、これを酷評するのは若干仁義に反しますが
一言で言うなら
「腐女子のための本」
以上です。
それ以外の女性が読んだって面白くない。ましてや男が読んだら…
まほろ駅前番外地まほろ駅前番外地
(2009/10)
三浦 しをん

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掏摸 中村文則

スリを主人公にした作品でこういう描き方もあるのだというものを示した作品という感じだろうか。
スリとか泥棒の類の視点は推理小説に好まれる題材で、それ自体は珍しくない。
だが、この作品は、木崎という得体のしれない恐ろしいものと、親に虐待されている子どもという二つの要素を絡めることで、一風変わった作品になっているといえるだろう。
何よりも木崎の「悪」としての描き方が素晴らしい。
ただ悪いだけの人間というのは嫌悪はするが、恐ろしさは感じない。だが、この木崎のめちゃくちゃなようでいて、妙にリアルな「悪」、しかも狂気としかいいようのない感覚の中にも冷静さがあるというこの恐怖。
木崎の存在がこの物語を根底から支えている。
物語中でどれだけ恐ろしさを強調しようと空振りに終わっている小説とはわけが違う。本当に怖いものは実在の人間で、それに説得力があればある程、恐怖は増す。
それを証明して見せた作品ともいえる。
掏摸掏摸
(2009/10/10)
中村 文則

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ペンギン・ハイウェイ 森見登美彦

森見作品をあまり小さい画像で紹介したくはないのだが…
これは期待外れだった。
特に何がいけないということはないのだが、今まで森見の作品はすべて一気に読み進めることができたのに、この作品に限り、途中から義務感で読み進めることになった。
ペンギンの謎を研究する小学生の男の子とかキャラクター設定が悪いとは思わないのだが、なぜか面白いと思えなかった。
終わってからも、ああやっと読み終わったと思った。ラストに意外性も感動もなく、ただ終わったという疲労感しか残らなかった。
期待値との乖離というのが最大の原因だろうか?
それとも小学生の描き方の問題だろうか?
ペンギン・ハイウェイペンギン・ハイウェイ
(2010/05/29)
森見 登美彦

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乙女の密告 赤染晶子

アンネを密告したのは誰か、という推理小説のような売り文句が付いているので、赤染晶子なりの解釈で面白く謎に迫る話かと思ったら、全くそういうものではなかった。
当り前と言えば当たり前だが、これは芥川賞の作品であり、結局のところいくつ謎をかけようともそこに合理的な解決はなく、文学的な終焉を迎えるのみである。というか収束させただけましだと思う。
そういう意味では芥川賞ということに反対はしない。支離滅裂に展開させて、ハイ文学的でしょう、ほめて、という作品より、期待したものとは違っても、収束させた分だけずっと好感が持てる。
それにしてもどうせこういう展開に持って行くんだったら売り文句を何とかしてほしいと思うのだが。
推理小説的なものを期待してしまう人がいる…かどうかはわからないが、少なくともこの本を表す売り文句としてはあまり適切なものとは思えない。
この乖離によって読み手に悪印象を与えてしまわないかが懸念される。
乙女の密告乙女の密告
(2010/07)
赤染 晶子

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出星前夜 飯嶋和一

よく練られた時代小説であり、いろいろと資料に基づいて書かれているのだろうという感じがする。
だから時代小説好きにはいいのかもしれない。
だが、そうでない人間にとって面白いかというとそうではない。
端的に言うと説明が多すぎる。
「そこは文中にとかしこむところだろう」とか「そこは別に説明しなくていいだろう」とか思う部分が多く、はっきりいって無駄に長いように感じた。
現代ではない以上ある程度説明部分があるのは仕方ない。しかし、どうも自分が頑張って調べたことをアピールしたいだけにしか思えない部分もあり、そこを捨てられなければ新たなファンを獲得するには至らないだろうと思った。
もちろん時代小説好きしか相手にしないのならそんなことは必要ないし、根強いファンがいるのも事実。
だが、こんな一部の人間しか相手にしない本は本屋大賞のエントリーにはふさわしくない。
出星前夜出星前夜
(2008/08/01)
飯嶋 和一

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すき・やき 楊逸

影法師の直後に読んだのが不運だったかなあ。
なんかこれでいいの?と思う点がいくつもあり、最終的に変なところに落ち着いてしまって、妙にすっきりしなかった。
韓国人の描き方が妙に嘘っぽいのと、全体的にあまり説得力がない感じに読めるのがマイナスだった。
一言で言ってしまえば、すき焼き店でバイトする中国人留学生の恋の話で、それ以上の何かはない。
「時が滲む朝」のように淡々と進めて行って最後にドカンと落とすのかと思ったら、最後までアッサリだった。
「時が滲む朝」は結果的にドカンといったけど、あれは偶然の産物であって、計算してできたものではないということなのだろうか?
あっさり読めるが、内容もその程度しかないように感じた。
すき・やきすき・やき
(2009/11/27)
楊 逸

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影法師 百田尚樹

時代小説はあまり得意でない私がこれだけ面白いと感じたのは藤沢周平「蝉しぐれ」以来といったらさすがに大げさだが、久々に面白いと思える時代小説を読んだ。
江戸から戻った家老がかつての友人彦四郎の死を知り、それからの回想という構成で、うまく文中に時代背景を織り込んだ。この描き方もいい。すんなりと物語に入っていける。
そして二人の人生は大きく分かれていくのだが、近藤史恵の「サクリファイス」のように二転三転する展開は推理小説のような面白さがある。
だからこそあまり詳しく物語については書かない。
彦四郎がなぜそのような行動をとったのか、最後に明らかになった時、ちょっとした感動があるだろう。

ラストが少しだけやりすぎだったのと途中の誤誘導にちょっと違和感があり誤誘導であることが分かってしまったので、そのあたりが些細な欠点と言えるが、とはいえそんな欠点が些細なものだと言い切れるほど、この物語は面白い。
私が時代小説をここまで勧めることはたぶんあと数年はないだろう。それくらいに優れた作品だった。
影法師影法師
(2010/05/21)
百田 尚樹

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薔薇を拒む 近藤史恵

これでこそ近藤史恵だろうと思った。
正直、「エデン」も「アネモネ探偵団」もらしくないなと思っていたので、こういうくせのあるほうがいい。
まあ逆にこういうのはらしくないと思う人がいるかもしれないが、そもそも「アンハッピードッグズ 」で近藤史恵にはまった人間としてはこういう一筋縄ではいかない主人公のほうが好きだ。
殺人事件とか屋敷の謎とかそういう正統派の推理小説として読んでもいいし、いろいろと別の読み方をしてもいい。主人公の終盤でのセリフが非常に印象的で、薄気味悪い感じすらする。
若干強引にまとめた感じがしないでもないが、あのラストなら許せる。
お化けの類は一切出てこないのにホラーの雰囲気も持つなかなかいいミステリーだと思う。
薔薇を拒む薔薇を拒む
(2010/05/27)
近藤 史恵

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龍神の雨 道尾秀介 

不幸な人間を量産するタイプの推理小説。
こういう話は基本的に好きになれない。だが、今回は比較的不幸に必然性があるし、最後も比較的まともな形で辞めている。
そういう意味では一応理論的に成立する推理小説としてそれなりに評価すべき作品と言えるだろう。
去年だったかにテレビ番組で絶賛されてはいたが、そんなに絶賛するほどの感動はない。が、感動押し売り本でもないので、普通の推理小説としてのレベルは満たしているといえるだろう。
龍神の雨龍神の雨
(2009/05)
道尾 秀介

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