とりあえず読んでみる
本の感想を思いつくままに書いています。読んだ順番ではありません。   あと非常に偏った趣味なのでその辺もご理解いただけると嬉しいです。    ※画像の大きさがおおざっぱなお勧め度です。

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切羽へ 井上荒野

直木賞を受賞した作品だが、どっちかっていうと芥川賞に近い系統の本じゃないかなあ。
この作品の場合、これはほめ言葉ではない。
田舎を舞台にして、主人公に方言を使わせ、生と死に関する話を混ぜておけばある程度の文学的評価は得られるらしい。
国土の大部分が都会化された日本では、意外と多くの人が田舎への憧れを抱えていて、だからこそやたら地方を舞台にした作品をありがたがる。
たとえそれがどれだけ中身のない作品であっても、だ。
そして直接的には中身のない作品を想像力で補ってもらおうというのが一部の「文学的な作品」だから、この作品もそのたぐいだろう。
そういう意味で「芥川賞に近い系統の本」と書いているのだ。


っていうかありきたりすぎでしょう。
穏やかな夫となんか得体のしれない男。(せめて逆にすれば少しくらいは珍しい設定になっただろうに)
この構図が使い古されていてかなり嫌な感じがする。
で、しずかさんという老人が出てきたりして、彼女はお決まりのように死ぬ。
…いやはや展開が決まっている作品としての面白さがあるものだって世の中にはあるのでしょうけれど、これはなんというか…
文章力が評価される小説というのはたいてい題材がおもしろくないと相場が決まっているが、ここまでくだらない題材にされると、もはや文章力でごまかしようがないと思うのだが。
切羽へ切羽へ
(2008/05)
井上 荒野

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ブラザー・サン シスター・ムーン 恩田陸

恩田陸はミステリー作家なのか?
まあ推理小説の定義なんてわかっていないので、これがそうだと言われたら、たぶんそうなのかと思うだけだろう。
ただ、トリックはない。
3人の視点から話が書かれており、話の中身は適当に過去を振り返るだけである。
そしてとりとめもない出来事の中に微妙な重なりあいがあったりする。
こういう風に書いてしまうとひどくくだらない物語に思えてしまうが、どこかしら不思議な雰囲気が漂うのは恩田陸のなせる技と言おうか。
よくわからないけど、おもしろいというのがこの本に対して最も妥当な評価だと思う。
ブラザー・サン シスター・ムーンブラザー・サン シスター・ムーン
(2009/01/23)
恩田 陸

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ヘヴン 川上未映子

序盤、川上未映子にしてはずいぶん読みやすいな、くらいしか思わなかったのだが、いつの間にかはまってしまっていた。
主人公の描き方も、コジマの描き方も、二ノ宮の描き方も、百瀬の描き方も、それぞれにきれいにキャラクターが分けられていて、非常にいい。
主人公やコジマの思い込みがいかにもいじめられている側の中学生らしく、しかも二ノ宮や百瀬の言い分がいかにもいじめをやる側の中学生らしい。
百瀬と主人公のやり取りなんかもまさに中学生しか言わないようなセリフで、川上未映子がここまで見事に描き出せるとは思わなかった。
終わり方も悪くない。
今まで川上未映子は書評家受けだけを狙った作家くらいにしか思っていなかったが、本作は文学に興味なしという人間にも十分に楽しめる。
時代設定はおそらく90年代だと思われるが、現代にでも十分通用する、強い力を持った作品だと言えるだろう。
ヘヴンヘヴン
(2009/09/02)
川上 未映子

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刻まれない明日 三崎亜記

こういうことはやってほしくなかった。
正直、三崎亜記史上最低の作品だと思う。

「失われた町」の続編という触れ込みだったので、「失われた町」のネタを使うのはまあいい。
だが「ヒノヤマホウオウの展示」(バスジャック収録の「動物園」のネタ)だの「七階が撤去された」(廃墟建築士収録の「七階闘争」のネタ)だの入れる必要があったか?
僕が伊坂幸太郎にいまひとつはまらないのは、この手の自分でネタふって喜んでる自己満足的な姿勢が気に入らないからである。
どうせやるならもっと思いっきりやって知らない人でもこれは宣伝なのだなと思えるくらいならいいのだが、知らない人が読んだら意味不明な部分が発生するというのが正直不快である。

で、こんなことやっている人はほかにも結構いるくせになぜ三崎亜記にやってほしくなかったか。
三崎亜記の奇妙な設定というのは、ふつうの世界なのに、そこだけ奇妙さがあるからおもしろいのであって、それをごちゃ混ぜにしたら、そもそもの世界観がおかしいだけの物語になってしまう。

さらにたちの悪いことに、この作品は感動押し売り本なのである。
最後のほうはあまりにもできすぎていて鼻で笑ってしまった。
感動なんかするわけないだろうが、と思った。

期待していただけに裏切られた感じの強い本だった。
刻まれない明日刻まれない明日
(2009/07/10)
三崎 亜記

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ロック母 角田光代

角田光代らしい短編集。
書かれた年代に結構差があるのだが、そこまで差があるとは思えなかった。
これは角田光代が進化していないとかそういう意味ではなくて、どれもそれなりに角田光代らしさが表れている、という意味である。
個人的にはもう少し衝撃的なものがほしかったかなあと思う。
「父のボール」はそういう意味ではかなり見事なものだったが、それ以外の短編はえっこれで終っちゃうの?というような物足りなさを受けた。これは決してつまらなかったからではなく、むしろおもしろかったからだ。そういう意味では「ロック母」などは十分に川端康成文学賞に値すると思う。
ロック母ロック母
(2007/06)
角田 光代

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美女と竹林 森見登美彦

なるほど、こういうエッセイの書き方もあったんだなと思う。
エッセイだと、森見のように文章にやたら凝る人だと、それが発揮できなくておもしろくないかもしれないと思ったが、全くの杞憂だった。
エッセイなのに、文章に森見登美彦らしさがあふれていて、非常に面白い。
まあ竹林は僕も好きだけどね(好きなのはそっちか?というツッコミは禁止)。
美女と竹林美女と竹林
(2008/08/21)
森見 登美彦

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ブランケット・キャッツ 重松清

レンタル猫の話。
レンタル猫屋の主人が出てくるという共通点はあるが、これ以外の人物は重なっていないから、まあ短編集と言っていいだろう。
ふつうに重松清らしい題材に猫を絡めた感じ。
重松清には職人芸的なものを感じるのだが、今回も見事に自分の土俵に引きずり込みつつ、その一方できちんとレンタル猫という題材を活かしている。
このバランス感覚もさすが。
大きな感動はないのだが、安心して読める作品である。
ブランケット・キャッツブランケット・キャッツ
(2008/02/07)
重松 清

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風花 川上弘美

川上弘美ってなんだってこう空っぽな本を書くんだろう。
あとは想像力でカバーしろとでもいうのか?
しかし缶コーヒーの缶だけを定価で買えといわれても買いたくないように、こういった中身のない本に中身を自分で入れろと言われても困ってしまう。
だいたい主人公ののゆりが甘すぎなんだよ。
これホントに33歳か?
あの世代って就職氷河期世代に入っているはずなのに、まったくそういう現実感がない。
かといってお嬢様というわけでもないし、この辺にうそっぽさが漂う。
まあ世の中にはいろいろな人がいるから、のゆりのような人間もいるのだろうとむりやり納得したとしても、そのあとに続く展開が不自然。
無視しなければならない要素が多すぎる。
かといって、話が進むかというと、時間だけが進んでいるが、状況をだらだら引き延ばすだけの当事者たち。
あまりにもくだらない。
最後まで、何も進まないまま終わる。
そして読む側としても時間だけを浪費して終わる。

川上弘美の文章は何冊か読んだが、全く中身がないように思う。
この人は何か表現したいことがあって文章を書くのではなく、ただ言葉を羅列したいだけなのだろうかと思ってしまう。
それでも芥川賞の選考委員をやるほどの作家なわけだから、この文章に中身を見出す人がいるのだろうなあ。
中身がない文章としての価値、ということだろうか?
風花風花
(2008/04/02)
川上 弘美

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赤いカンナではじまる はらだみずき

「サッカーボーイズ」のシリーズでおなじみのはらだみずきの短編集。
作本がいくつかの話に登場するので、連作短編集といってもいいかもしれない。
おもしろいのだが、何か物足りない。
おそらく、一人称で物語を組み立てたことで、なんとなく世界が単調になってしまったのだろう。
サッカーボーイズのシリーズでは大人の視点と少年の視点を交錯させたことで物語に奥行きを出していたが、今回は大人の視点のみ。そして現実を知っている大人に現実を突き付けるだけの作品、という風に読めてしまう。
もちろん、決して悪い作品ではないし、僕が期待したものと違ったというただそれだけのことなのだが、何か足りない感じは残ってしまった。
赤いカンナではじまる赤いカンナではじまる
(2009/10/27)
はらだみずき

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わたしを離さないで カズオ・イシグロ

なんとなく外国小説を読んでみる。
推理小説でもないくせにネタばれが許されない本というのは困るなあと思う。
自分が生まれ育った施設の正体を追い求める話なのだが、それだけでなく、それと同時に主人公が持っている情報も少しずつ読者に開示されていく。
そしてたどり着いた衝撃の結論は…
となるはずなのだが、このパターンは中学生の時、漫画で読んだ。
結構有名な漫画で、たぶん知っている人も多いだろう。ゆえにこの作品名を出せば、ネタばれしたも同じになってしまうので、作品名は伏せる。
この漫画を知っている人なら読んでいる途中でうすうすわかってしまうんだな。
そんなわけで解説の柴田元幸さんがお書きになっているほどの衝撃はなかった。
テーマとしてはそんなに突飛なものではないと思ったのだが。
柴田さんはおそらく漫画をあまり読まない方なのだろう。
(ネタばれ避けたら本編の話ではなく、解説への感想になってしまった…)

ただ文章はとても丁寧に構成されていて、かつ抑えた調子で書かれていて、単純に文学としての評価の高い本だと思う。
わたしを離さないでわたしを離さないで
(2006/04/22)
カズオ イシグロ

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文庫版もあるらしいのでその画像も貼っておこう。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
(2008/08/22)
カズオ・イシグロ

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検挙票 飯田裕久

最近、推理小説系を読んでいないと思ったので、手を出してみたのだが…
推理小説と警察小説の区別が付いていないだろう、というツッコミはまあしないでもらうとして、なんか面白くないというのが感想。
リアルな警察小説、という触れ込みであったが、事実を書いていることと、リアルというのは別物なのだと思う。
人間の仕事だとかなんとか人間性をエラそうに強調する割には、登場人物の書き分けができていない。
そのせいで、会話をつないだ時にだれの発言か見失いそうになる。
主人公を女にしてアクセントをつけたつもりだろうが、それでもかなり厳しいものがあった。
またこの主人公の女に魅力がない。人間味がないんだろうなと思う。女にはこういう心理があるのだと言われたって、この女自体がそもそもうそっぽいのに、そんな心理があるかどうか知ったことかと思う。
何も人間の内面をきっちり描き出せなどと言うつもりはないが、全体に人物の描き方があまりにもスカスカで、スポットを当てたところくらいはちゃんと書けよ、と思った。

人物を描くのが苦手ならそこに焦点を持ってこなくてもいいのに。
せっかく警察の知識はあっても空回りという感じがした。
検挙票検挙票
(2009/09/04)
飯田 裕久

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光 三浦しをん

内容としては衝撃的な内容で、シリアスに作っている。
悪人の描き方が若干ステレオタイプで、お粗末なので、これをシリアスな作品でとらえると、高い評価は出せない。
だが、ちょっと読み方を変えてみると、さすがは三浦しをん、という感じになる。
三浦しをんは自身が公言する「腐女子」。
その同人的な思想を取り入れてある。
輔の信之への歪んだ愛はまさに腐女子の本領発揮といえる。
しかも男がきちんと腐女子にウケるような外見を備えている。
これこそが三浦しをんの真骨頂。
シリアスな中にもオタク思想あり。
この読み方ができるからこそ、この作品は評価されるべき作品になったといえるだろう。
光
(2008/11/26)
三浦 しをん

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東京島 桐野夏生

タイトルとか紹介文とかから若干ミステリー的なものを期待していたのだが、そういうのではなかった。
はっきりいってこういうの苦手です。
なんていうか、性をあまり前面に出されるとちょっと入り込めなくなる。
設定としてはなかなか面白いと思うんだが、どうもこういうのは好きになれない。
主人公がもう少し若かったら、もっと違っていたかもしれない…
いやそういう問題でもないか。
東京島東京島
(2008/05)
桐野 夏生

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永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢 重松清

小さい画像にするかどうか本気で悩みました。
カイムという死なない男を主人公にした短編を多数集めた本ですが、いくつかおもしろい話もある、という程度。
重松清自身が最初に前置きしているように、たぶん彼にとっては苦手なジャンルの作品なのでしょう。
うそっぽい話がかなり多くて、重松清の良さをあまり出せていない話が多かったです。
ただ、こういう主張がまだまだ許される、という現代の希望というかそういう安心という点で小さい画像にはしませんでした。
石田衣良なんかは激しく攻撃されていますが、重松清はまだ大丈夫、と。
これで重松清が攻撃されるようになったら日本は終わり、という指標になる本かもしれませんね。
永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢
(2007/11/21)
重松 清

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あした吹く風 あさのあつこ

ついにこうきたか。まあそのうち書くだろうという気はしていたが。
ただなあ…
もう少しなんかこう…ねえ…
なんか要するに34歳で美人ってのがまず自分自身の願望の投影。
そして若く美しい(あさのあつこ好みの)少年が、それだけ年の離れた女性におぼれるということもおそらくあさの自身の願望だろう。
そう思えてしまうほど、この作品には説得力がない。

だいたい鈴の学校での人間関係の描き方がうそっぽすぎる。
高校生だろ?なんだよ、これ。友達的な存在の人間がマジでウザすぎて、その点においてもこの作品の評価を下げざるを得ない。
学校のシーン全面カットしてしまえばよかったのに。

そりゃあ男の欲望だけで構成された小説が文学作品を名乗っている例が世の中には数え切れないほどあるんだから、女がそれをやったところで非難される筋合いはないだろう。
だが、欲望はほどほどに抑えて書かないと男性読者は付いてこないような気がする。
あした吹く風あした吹く風
(2008/12)
あさの あつこ

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地図男 真藤順丈

物語の中の物語、というのは意外と難しい。
美内すずえの「ガラスの仮面」が名作といわれるのは、物語の中の物語も十分におもしろいからであり、そういった作品がごくまれにしか存在しないからだ。


地図男は地図に物語を書きとめている男。しかし、その物語はお世辞にも面白いとは言えない。
だが、主人公の男やその職場の後輩はこの男の作品を褒めまくる。
それが余計に読み手を白けさせる。
自分の作品を自分で褒めまくる、それって自画自賛ていうんじゃないのか?
地図男の生い立ちの謎だの物語を読んでいたらわかるミステリーだの妙な伏線をはろうと試みてはいるが、そもそも地図男に興味を持てなければ、そんなことはどうでもいいことにしか思えない。
そうなるとこの妙な伏線を推理小説として解釈しようとしても無理であり、結局何をどうすれば楽しめるのかが理解できなかった。
地名ごとに妙な話が出てくるものを読みたければいしいしんじの「東京夜話 」で用が足りる(っていうかこっちのほうがおもしろい)。
ここしばらく大外れはなかったので、そろそろあたってしまったというところかもしれない。
地図男 (ダ・ヴィンチブックス)地図男 (ダ・ヴィンチブックス)
(2008/09/03)
真藤 順丈

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夜をゆく飛行機 角田光代

家族というのはそれぞれに役割分担があるのではないかと思う。
だが、それはあくまで家族の中での顔であって、それは外に出すべきものではない。
そしてその一方で家族には言えないこともいろいろと抱えていたりもする。
この作品はそういう微妙なバランスによって成り立っている人間というものを見事に描き出した作品だと言えるだろう。
若干人物像に色をつけすぎなきらいがあるが、うまくかき分けていると思う。


ところで本筋とは全く関係ないのだが、主人公が友達でも何でもないくせにべたべたしてくる同級生からもらったくまのぬいぐるみを捨てるところのくだりがとても面白く、思わず笑ってしまったのだが、これは別に笑いをとる部分ではないのだろうなあ。
夜をゆく飛行機 (中公文庫)夜をゆく飛行機 (中公文庫)
(2009/05)
角田 光代

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ブラックジャック・キッド 久保寺健彦

久保寺健彦の描く少年というのはとても魅力的だ。
強さと弱さと両方を持っていて、どこかバカなところもありつつ、真剣で、とても少年らしい。
この作品ではブラックジャックにはまった少年が見事に描かれている。
そしてそこに立ちはだかる過酷な現実も。
そこに目をつぶって子どもの世界を描き出そうとして読み手を白けさせる作品が多い中、大人のずるさと、子どもの世界の汚さとバランス良く描いているところも評価すべきところだろう。
ただ一つ残念なのは伏線が処理しきれていない印象が残ったところ。ちょっといらない設定があったかなという気がした。
ブラック・ジャック・キッドブラック・ジャック・キッド
(2007/11)
久保寺 健彦

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横道世之介 吉田修一

今までの吉田修一の文章と少し雰囲気が違うなと思った。
しかし、それに気づいた時にはすでに止まらなくなっていた。
おもしろい。もしかしたら吉田修一の作品の中で一番かも知れない。


人生において誰かに話すほどのことというのは意外と少ない。
ではそれ以外の時間はどう過ごしているのか、と考えたときに何か自分の人生がひどく隙間だらけのもののように思えてくる。
この作品はそんな「隙間」の部分を丁寧に描いた作品だと言えるだろう。
そもそも横道世之介という人物自体がこの「隙間」の集大成のような人間である。
そしてそれを表すかのように世之介にかかわった人たちのその後の話がところどころに挟まっており、彼らは世之介をはっきりと思い出しはしない。
とりたてていいやつという感じではない。でもこういう人に出会えたら得をした気分になるという作者のメッセージはとてもよくわかる。
僕が世之介に出会っていたら…
そう想像せずにはいられなくなってしまう作品である。
横道世之介横道世之介
(2009/09/16)
吉田 修一

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女神記 桐野夏生

古事記をベースにして、なんか神話風な昔話風な話を作ってみました、という感じ。
なんというか常識に縛られていて、独創性のない話になっている。
どうせならもっと別の切り口や斬新な解釈というのがあってもよかったのではないか。
たとえばマヒトの行動の謎、という形で推理小説仕立てにするのもありだし、イザナミの描き方を変えてみるというのも桐野夏生ならおもしろいものができたはずだ。
だが、結局無難な方向でまとめてしまい、とても自然な流れの話になってはいるのだが、物足りなさが残った。
女神記 (新・世界の神話)女神記 (新・世界の神話)
(2008/11/29)
桐野 夏生

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弩 下川博

うーん歴史小説ってのは苦手だ。
作品としてはそれなりに良くできていると思うし、丁寧に調べたうえで構築された物語であることは間違いないのだが、根本的に何か好きになれない部分があるのだろうなあ。
農民を主人公にして、武士と戦う話というのは「七人の侍」に代表されるようにテーマとしてはそこまで珍しくないが、弩を利用するという作戦がそれなりに個性的と言えないこともない。
しかしタイトルにするほど弩が前面に出ているようには思えなかった。
結局のところ、苦手のジャンルの本であるがゆえに楽しめなかった、というのが感想。
松田チョイスで紹介されていたのでおもしろいかとも思ったんだが、こういう歴史小説の王道は苦手だということを改めて感じた。
歴史小説が好きな人にはおもしろいと思う。
弩
(2009/05/11)
下川 博

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ねずみ石 大崎梢

表紙の絵がよかったので手に取ってみた。
主人公を中学生に設定してあるため、中高生向けの推理小説という感じだろうか。

だが、それが成功した作品といえるだろう。
設定を田舎の村にすることで目撃者を減らせる。
携帯電話も使いにくくする。そしてこれなら中学生で携帯を持っていない人が多数派というのも説得力が出る。
こうやってうまい具合に現代のミステリー作家を悩ませる要素を消し、あとは主人公の年齢を抑えることで、いろいろと知識を集めなくてすむようにできている。

こうやって材料を限ることの必然性を作りだしたところがこの作品の最大の勝因である。

材料が限られているから、「配達赤ずきん」でところどころに見られたような綻びがない。
むしろ限られた材料をうまく活かしているようにすら見える。

読みやすいのでおそらく小学生でも読めるし、また大人が手に取った時も、ああ主人公は中学生(しかも1年生)だからこんなもんだろう、と思ってくれるので、詰めの甘さが逆に子供らしさに見える。

大崎梢としては会心の作品といえるだろう。
ねずみ石ねずみ石
(2009/09/18)
大崎 梢

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決壊 平野啓一郎

読みながらふと人気のフィギュアスケーターのA選手の演技を思い出した。
重厚な音楽に合わせ、複雑な技を詰め込んだ素晴らしいプログラムだと思ったが、ミスもあって評価されなかった。
この本もそんな感じがする。殺人事件は起こるが、推理小説ではない。それゆえにわかりやすさはないし、登場人物のせりふも長い。
しかし、多くの知識に裏付けされており、それが随所に詰め込まれている。
「重厚で複雑な作品」という観点ではA選手の演技に共通するものがある。
ついでにミスがあったせいで作品自体の評価を下げざるを得ないところも共通している。
だが、この程度のミスは気付かない人も多いだろう。あえてここで論うほどのものでもない。

ところでA選手の演技がこの作品だとすると、A選手のライバルとされる選手の演技はわかりやすく、表現も単調だからさしずめ携帯小説というところだろうか?そこまでいったらライバル選手に失礼か。


個人的にはラストが気に入らない。いやあの作品にふさわしいラストであり、あくまで個人的に好きではない、というだけなのだが、あれではいくらなんでも気の毒ではないか?

決壊 上巻決壊 上巻
(2008/06/26)
平野 啓一郎

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決壊 下巻決壊 下巻
(2008/06/26)
平野 啓一郎

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